崖の秘密 〜波間に揺れる真実~第6話・最終話

 


第6話:「プリンの逆襲」

取調室。ミキは憔悴しきった表情。

「岸本リエを最後に見たのは?」

……間違いなく、あの崖の上。けど……私じゃない。本当に突き落としたのは……

若手刑事が入る。
「サワダさん、防犯カメラの映像、解析できました。事件当日の朝、ユウタの姿が写ってます。しかも、リエさんのアパート付近で」

ユウタは再び事情聴取を受ける。

「さあ、話してもらおうか。あの日、なぜリエさんに会いに行った?」

ユウタは黙ったまま、時計の音だけが室内に響く。

そしてぽつりと語った。
……なんでだと思います?なぜ人を……突き落としたのかって?」

サワダが静かに促す。
……聞こうか、その動機を」

ユウタの目は赤く腫れ、怒りと悲しみが混ざった表情だった。

……あいつ、俺の……プリン、食ったんです」

取調室は一瞬静まり返った。

ユウタのって、ちゃんと書いておいたんですよ……付箋貼って。それも限定の抹茶チーズケーキ味ですよ!?冷蔵庫の一番奥に、見えないように置いたんです。……3日間、我慢してた。忙しくて、疲れてて、けどそれだけが楽しみで……

「それが……帰ったら、ないんですよ。プリンが。付箋は……ゴミ箱に、丸めて捨てられてて。あいつ、ニヤニヤしながら言ったんです。美味しかった~って……!」

机を叩くユウタ。

「俺がどんな気持ちで毎日過ごしてたか、知らないくせに!……あの一口を、奪われたんです……

沈黙。サワダは少し呆れたように言った。

「プリンだと……だからって、人を殺していい理由にはならない」

「分かってます...分かっているけど...あの時はどうにも自分の気持ちを抑えきれなかった......」

ユウタは崩れ落ちるように座った。


法廷。裁判官が淡々と告げる。

「被告人・ユウタの犯行は、計画的とは言い難いものの、その行為は取り返しのつかない重大な結果をもたらした。動機は極めて幼稚で、理解しがたいものだ。プリンを巡る衝動的な怒り……しかしながら、感情の制御を欠いたその行動が、人の命を奪った事実は動かせない」

ユウタは顔を伏せたまま。

「よって……被告人を有罪とする」

木槌の音が響き、静寂が戻る。

夕暮れの取調室。サワダがひとり、冷めたコーヒーを見つめる。

ナレーション(軽妙なBGMとともに):


「こうして、プリンを巡る壮絶な事件は幕を閉じた。甘くて小さなスイーツの裏には、誰もが抱える孤独や怒りが潜んでいるのかもしれない。――あなたの冷蔵庫にも、心のスイッチ、眠っていませんか?」


画面にはテロップ。

「完 『プリンの逆襲』」

カメラがずらりと並ぶスタッフロールを映すと、どこからか現れた主婦探偵がにっこり笑い、全てを見知っていた顔で一言。

「やっぱり、プリンは恨みを呼ぶのよねぇ……



次回予告

ナレーション:
「女将が倒れた!? 消えたレシピ帳!? 商店街は大パニック!」

(映像:トメ子がフライパン片手に台所を駆け回る → 久住がマヨを振り回す → 俊が焦げた鍋に頭を抱える → 灰田が無表情でメモを書く → 小暮刑事が真面目すぎて空回り)

ナレーション:
「主婦探偵・田所トメ子が、揚げ物パワーで事件に挑む!」

トメ子(決め顔で):
「揚げ物は……正義よ!」

テロップ:
『田所トメ子の事件簿〜おかずと犯人は冷めないうちに〜』

次回スタート! 揚げたてを見逃すな!



にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説へ
にほんブログ村

コメント