『田所トメ子の事件簿〜おかずと犯人は冷めないうちに』〜 第3話
登場人物
田所トメ子(40代前半・主婦探偵)
冷静沈着で観察眼鋭い。フライパン片手に推理し、揚げ物にこだわる。
小暮刑事(30代前半・警察官)
真面目で几帳面。現場の手順を重んじ、トメ子の良き相棒。
女将・金子かよ(60代・惣菜屋店主)
厳格な職人気質。商店街の揚げ物文化を守る存在。
灰田(40代・料理研究家)
理知的で冷静。味とレシピに精通。
久住(20代・自称マヨラー)
明るく天然。マヨネーズ愛が強く個性的。
俊(中学生・自称シェフ)
熱血で純粋。料理に情熱を燃やす。
第3話「レシピの系譜」
ナレーション(重々しく):
「“黄金衣”をめぐる闇は広がりを見せる。秘伝の揚げ衣は、街全体の運命を揺るがす――」
シーン1:新たな手掛かり
場所: カネコ食堂 奥の物置
(トメ子が埃をかぶった古い箱を開ける。中には写真やノートがぎっしり)
トメ子(独り言):
「……戦後すぐの新聞記事? “黄金衣、商店街を救う”……」
(小暮刑事が横から覗き込む)
小暮刑事:
「女将のレシピは、ただの料理じゃなかったんですね」
トメ子:
「ええ。これは一家の味じゃない。商店街全体の歴史そのものよ」
(トメ子、ノートに挟まれた小さな布切れを取り出す。油の染みが残っている)
シーン2:料理研究家・灰田の証言
場所: 灰田の研究室
(無数のレシピカードと調理器具に囲まれた部屋。灰田が静かにペンを走らせている)
トメ子:
「あなたは、女将のレシピを記録していたのね?」
灰田(淡々と):
「私は記録する者。盗む必要はない」
小暮刑事:
「では、あの“黄金衣”の秘密を知っているんじゃないですか」
灰田(表情を変えずに):
「……“温度”です。油の温度と、衣の厚み。その組み合わせが、奇跡を生む」
(トメ子がはっとする)
トメ子(心の声):
「温度……女将が最後に残した“衣が剥がれない”という言葉……」
シーン3:俊の影
場所: 学校の家庭科室
(俊が一人で揚げ物をしている。制服の袖には新しい油染み)
トメ子:
「俊くん……学校でこんな時間まで?」
俊(振り向かず):
「僕は……あの人の“黄金衣”を再現したいんだ!」
(彼がノートを広げる。そこには“揚げ直し実験”と書かれたメモがびっしり)
小暮刑事(疑いの眼差しで):
「つまり、君はレシピを手に入れようとしていた?」
俊(感情的に):
「違う! 僕は盗んでなんかない! ただ、近づきたかったんだ……女将の揚げ物に!」
(トメ子、彼の必死さに目を細める)
シーン4:不自然な焦げ跡
場所: カネコ食堂 台所(再調査)
(トメ子が床の隅を懐中電灯で照らす)
トメ子:
「……やっぱり。焦げ跡がある。だけどこれは鍋の熱でできたものじゃない」
小暮刑事:
「じゃあ何で?」
トメ子:
「……火を使い慣れている人間が、不自然な加熱をした。まるで……証拠を消すために」
(小暮刑事の表情が一瞬だけ硬くなるが、すぐに真顔に戻る)
シーン5:エンディング
場所: 商店街の夜道
(トメ子が揚げ物屋の軒先で油の音を聞いている。ジューッという音が夜に響く)
トメ子(心の声):
「……油の温度。揚げ物の鼓動。必ず、真実を語る」
ナレーション(重々しく):
「次回――弟子か、それとも裏切りか。少年の情熱は、黄金衣を焦がすのか」
(BGM高鳴り、俊が涙目でフライパンを握りしめるシーンで暗転)

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