「Kallsson (カルソン)・泉・ピン子は見ちゃった! 北欧湖畔のシナモンロール殺人事件 ~第4話」
【火曜サスペンス劇場風 第4話】
『北欧断崖ミステリー ~Kallsson・泉・ピン子は見ちゃった!~
疑惑と断崖』
――夜明け前。
湖畔にはまだ薄い靄が立ち込め、ホテルの輪郭もかすんで見える。
ピン子はベーカリー前のソファに腰を下ろし、震える指先を握りしめていた。
ピン子(心の声):
「誰かが私を突き落とそうとした…つまり、犯人はまだここにいる。
消えたシナモンロールも、その証拠の一つ…。」
そのとき――。
廊下の奥、ガラス窓の向こうで人影が動いた。
霧の中へ消えていく背中を見て、ピン子は立ち上がる。
ピン子(心の声):
「待って…!あれはもしかして犯人…?あの画家の老人のように見えるけど...」
霧は一層濃くなり、視界は真っ白に。
追いかけようとするが、足音も姿もすでに消えていた。
ピン子(心の声):
「だめだわっ…!この靄じゃ追えない…でも確かに“誰か”がいたわ…。
私を狙ったのは、やっぱりあの画家風の老人?」
力なくソファに戻り、夜を越えた朝。
湖面に朝日が反射し、霧は薄れ始める。
ピン子(心の声):
「昨夜の人影…必ず突き止めてみせるわ。」
――その日の午前。
湖畔の断崖近く。
画家風の老人が、一人で周囲を見回しながら歩いている。
その後ろを慎重に距離を保ちながら、ピン子が追っていた。
ピン子(心の声):
「やっぱり…怪しい。昨夜も妙にホテルをうろついていたわ。」
――断崖の上。
画家風の老人は誰かを待つかように周囲を見回していた。
ピン子は木陰に身を潜め、息を殺す。
ところが――。
「ガサッ!」
足元の木の根に引っかかり、思わず転ぶ。
ピン子:「Fan!(しまった!)」
宿泊客(老人)が振り返る。
ピン子は慌てて身を隠すが――その瞬間、スマホが震えた。
「♪ピロリン!」
画面には「田所トメ子」の文字。
慌てて耳に当てる。
ピン子(小声で):「トメちゃん!? 今、ダメ…!」
トメ子(電話口・大声で):「えっ!? ちょっと、どういう状況なのよ!?」
ピン子(小声で):「後で連絡するから!」
――慌ててLINE通話を切る。断崖に声が反響する。
老人が鋭い目で周囲を見回し、足を速める。
ピン子(心の声):
「バレた…!追い詰められる…!」
――緊張の中。
画家風の老人は断崖に立ち、両腕を広げる。
ナレーション:
「追い詰められた容疑者の口から語られる真実――
だが、警察もいない。
そして、この告白は…事件の核心へ繋がるのか、それとも――。」
――場面転換。
グランドホテル・カネルブッレバーデンのロビー。
高い天井にはシャンデリアが揺れ、朝から観光客が行き交うざわめきが微かに響いている。
窓の外には湖畔の霧が広がり、陽光は白く滲んで見える。
父・クリスティアンは革張りのソファに腰掛け、広げていた新聞をゆっくりと閉じた。
大きな手が膝の上で組まれる。指先はかすかに震え、彼の胸の奥に押し込めた不安を物語っていた。
クリスティアン(心の声/スウェーデン語):
「Pinco… må du vara i säkerhet…(ピン子…どうか無事でいてくれ…)
Men ju mer du försöker avslöja sanningen, desto mer drar klipporna dig till sig…(だが真実を暴こうとすればするほど、断崖はお前を引き寄せてしまうのだ…)」
彼は眼鏡を外し、額に手を当てて目を閉じる。
深い息を吐き出すと、その吐息さえもロビーの重苦しい空気に溶けていった。
――断崖。
湖畔の霧はますます濃くなり、断崖はまるで別世界のように沈黙していた。
岩肌に立つ老人の声が、風に裂かれて響き渡る。
老人(震える声):
「Jag… jag måste berätta sanningen…!
(俺は…真実を言わなきゃならない…!)」
ピン子は岩陰に身を潜め、耳を澄ます。
喉が乾き、呼吸ひとつが大きな音になってしまいそうだった。
老人(叫ぶように):
「Det var inte en olycka… det var mord!
(あれは事故じゃない…殺人だったんだ!)」
その時――。
霧の中から足音が近づく。
重く、しかし妙に小刻みなリズム。まるで靴の底に砂利が詰まったような、不自然な響きだった。
謎の人物(低い声で):
「Du pratar för mycket, gamle man…
(あんたは喋りすぎだよ、じいさん…)」
ピン子の背筋に電流が走る。
――この声、どこかで聞いたことがある。
思い出そうとするが、心臓の鼓動が邪魔をして思考がまとまらない。
老人(必死に):
「Du... inte kan det vara så att— (お前…まさか――)」
謎の人物(語気を強めて):
「Tyst!(黙れ!)」
その瞬間、霧がわずかに晴れ、人物のシルエットが浮かび上がる。
背丈、肩のライン、首に巻かれたスカーフ――
ピン子の脳裏に、ホテルのロビーで見かけたある人物の姿がよぎった。
だが確信に至る前に、霧が再び濃く覆い隠してしまう。
ピン子(心の声):
「(今の影…あの人に似ていた。でも、どうして…?)」
老人の足元の石が崩れ、危うく身体が前に傾く。
断崖の下から、湖面を叩く波の音が不気味にこだました。
ナレーション:
「湖畔に潜む影。
犯人と疑わしい画家風の老人が断崖に呼び出され、告白の時が迫る。」
「北欧湖畔の静けさを裂く、見えない闇――。
泉ピン子は、誰も知らない真実の断崖に立つ。
影は近づき、危険は迫る。
そして、事件の結末は――ついに明かされる。
第5話『断崖絶壁の告白』、衝撃のクライマックス」――。
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登場人物紹介
Kallsson 泉・ピン子(Kallsson Pinco)
日本とスウェーデンのハーフ、30代の女性。
聡明で観察力に優れ、直感が鋭い。
父との再会を機に、北欧の湖畔のホテルで滞在する。
Kallsson Kristian(カルソン・クリスティアン)
ピン子の父。スウェーデン人。
穏やかで落ち着いた人物だが、何かを深く考えているような表情を見せることも。
娘・ピン子を温かく見守る存在。
Lars Lindgren(ラーシュ・リンドグレン)
グランドホテル・カネルブッレバーデンのレセプショニスト。
若く端正な容姿で、物腰が丁寧。
ホテルの業務をしっかりとこなす一方で、独自のこだわりを持っているような人物。
田所トメ子(Tadokoro Tomeko)
ピン子の日本での友人。
現場や情報をもとに的確なアドバイスをくれる頼れる存在。
ピン子の行動を支える通信手段として重要な役割を担う。
シェフ
ホテルの厨房を取り仕切る男性。
料理やホテル運営にこだわりがあるが、やや秘密めいた一面も。
画家風の老人
湖畔を好んで訪れる謎めいた人物。
静かで観察力があり、ホテル内でも一定の存在感を放つ。
ベテランウェイトレス
長くホテルで働く女性スタッフ。
周囲の状況に敏感で、宿泊客の様子をよく見ている。
ビジネスマン風宿泊客
ホテルに滞在する男性客。
落ち着いて見えるが、行動や証言には何か秘密があるかも…?
カップル客
ホテルに滞在する男女。
表面的には仲睦まじく見えるが、状況や発言に微妙なズレがある。
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